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札幌高等裁判所 昭和53年(ネ)224号 判決

控訴人(原告)

池田宗吉

被控訴人(被告)

鈴木良一

右訴訟代理人

梅原成昭

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

控訴人の本件訴状に記載されている請求の趣旨、請求の原因の部分の記載内容は、その記載だけからは、その趣旨が明確であるとはいえないが、控訴人が提出する証拠書類の写であるとして、本件訴状に添付して原審裁判所に提出し、本件記録に編綴されている甲第一ないし第二六号証の各写の記載を合わせて考察すると、本件訴状に記載されている請求の趣旨が、当審において控訴人が明確にした、本判決事実欄に掲記の、被控訴人に対して本件建物についての所有権移転登記手続を求める請求を記載したものであること(右のほかに、当審において控訴人が訴の取下をした、被控訴人に対して金三〇万円及びこれに対する年六分の割合による損害金の支払を求める請求を記載したものであること)、及び本件訴状に記載されている請求原因の要旨が、当審において控訴人が明確にした、本判決事実欄に掲記の控訴人の請求原因のとおりのものであることを窺知することができる。

してみると、当審において控訴人が、その請求の趣旨、及び請求原因を前掲記のとおり明らかにしたことによつて、本件訴状の記載による控訴人の本件訴の請求の趣旨、原因が不明確であるという欠缺は、補正されたものということができる。

原判決は、控訴人の本件訴が、その請求の趣旨、原因が不明であるため、不適法であるとして、本件訴を却下したものであること、民事訴訟法第三八八条によると、原判決を取消して、本件を原審裁判所に差戻すべきものと考えられるが、前掲記の控訴人の請求原因事実によると、控訴人は本件建物の競落代金を納付していないというのであるから、控訴人が本件建物所有権を取得したといえないことは明らかであり、かつ本件建物は再競売に付されて、被控訴人に対する競落許可決定がなされたというのであるから、控訴人が昭和四六年一二月一六日の競落に基いて本件建物所有権を取得できる余地のないことも明らかであり、したがつて、控訴人の本件請求が主張自体から理由のないことが明らかであることからすると、本件を原審裁判所に差戻すことは、訴訟経済の観点からみて、当事者双方に無用の負担を負わせることになるから、このような場合には、前記法条の形式的文理にかかわらず、同法第三八五条に定める控訴人に対する不利益な変更の差止に反しない、控訴棄却の判決をすることができるものと考える。〈以下、省略〉

(宮崎富哉 寺井忠 塩崎勤)

物件目録〈省略〉

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